『‟認知が進んだ”という表現の違和感』と『知っておくべき‟前提知識”』

認知症ケア

認知症の『人』を理解する

よく、「遂に認知が入ったかな」「あの人、認知が進んでるね」などと表現するのを耳にしたことがあります。

発言者は、恐らく「認知症になった」「認知症の症状が進んだ」と言いたいのだろうと推測できます。

確かに、自分のおじいちゃんおばあちゃん、親が「認知進んだ」って言われるのは抵抗があるな…。

そうだよね。『認知症の人』という言葉は、『認知症という病気にかかった人』や、『認知症という病気の症状が認められる人』という意味が妥当だよね。骨折している人に『骨折の人』とは言わないでしょ?人間と病気の間で皆さんが無意識に持つ病気や怪我に対する考え、偏見を見直していかないといけないね!ただし、世間では一般的に使用されている言葉であることは確かなので、これらをしっかりと考えた上で『認知症の人』と表現しているのであれば悪くは無いですね。

認知症という疾病は、「症状」と「人間」とは密接に関連するがゆえに、「認知症」と「個人の背景」の両方を理解しなくてはなりません。認知症という疾病に目を奪われず、その人をみることを忘れないということがケアの基本のひとつです!

そもそも『認知』とは?

聞きなじみの深い言葉ですが、『認知』と聞いてしっかりと説明できる人はいるでしょうか?

改めて考えると難しいぞ…思考力が低下している状態ですか?

惜しい!思考力だけでなく、イメージや保持、再生、問題解決に必要な機能などの下位領域まで掘り下げてみよう!

認知とは、感覚や知覚、記憶、言語、思考、情報処理などの機能を主要な領域とし、認知機能とは、知能の基盤となる心理的機能である。

ちなみに、代表的な知能検査を開発したビネー(Binet A)とウェクスラー(Wechsler D)の知能の定義も紹介しておきます。

ビネーは、「①一定の方向をとり、それを維持する能力」「②目的を達成するため適応する能力」「③自己批判をする能力」

ウェクスラーは、「目的ごとに行動し、合理的に思考し、環境を効果的に処理する個人の総合的、または全体的能力である」

と定義しています。

ちょっと難しいけど、状況に応じて、柔軟に、臨機応変に行動できるという事だね!ビネーの自己批判をする能力というのも確かに…!って思うな。

感覚機能・記憶機能・知能の加齢変化

感覚機能

外界の情報を受け止める五感の機能は、いずれも加齢により変化します。以下、参考にしてみてくださいね♪

視覚機能

近くや遠くを見るために必要である近視視力や遠視視力と関連する焦点調節能力、明るい所から暗闇に入る際、あるいはその逆において、目の慣れである暗順応と明順応などは年齢とともに低下します。視野が狭くなったり、動体視力が低下したり、短い波長の色である青から黄の弁別力も低下し識別が悪くなります。

聴覚機能

難聴の有病率は65歳以上で急増します。高齢者では高い音が聞こえ難くなったり、加齢性難聴では音が小さくなるだけでなく語音の明瞭度が悪化し、音がゆがんだり途切れたりするという特徴があります。

嗅覚機能

嗅覚機能の低下は60歳代以降で顕著となります。

味覚

年齢による低下は緩やかと言われています。

皮膚感覚機能

熱い、冷たいという温度感覚は年齢に伴い低下していきます。

それぞれの低下には個人差があるということは言うまでもないですが、聴覚機能の低下に伴ってコミュニケーションが取りづらくなることが認知症の発症だと間違われているケースも少なくないんだ。認知症の背景となる病気の影響で嗅覚や味覚の変化が生じることもあるので注意をしてみていけると良いですね

これは高齢に伴うもの?認知症によるもの?など、認知機能の入り口としての五感の機能を正確に理解する事はケアにおいて重要!

記憶機能

認知機能の中核をなす記憶機能は、勉強していくうえで特に理解しておかなければなりません。加齢の影響について、一度おさらいしていきましょう!

単純な短期記憶

加齢の影響はほとんど無く数秒~数分の間、覚えておく機能です。

ワーキングメモリー(作動or作業記憶)

加齢の影響が顕著にみられ、短い時間、あることを記憶に留めると同時に、認知的な作業を頭の中で行う記憶(数字の逆唱など)です。

エピソード記憶

加齢の影響が顕著(成人期の比較的早い時期から徐々に衰退)にみられ、ある特定の時間と場所での個人にまつわる出来事の記憶(朝食の内容や昨日の出来事など)です。

意味記憶

加齢の影響はほとんど無く、誰もが知っている知識についての記憶(消防車の色やスプーンの使い方、日本の首都など)です。

知能

古典的加齢パターン

有名なのは、成人用の知能検査を開発したウェクスラーの言語性知能と動作性知能と呼ばれるものです。

言語性知能30代がピークで、その後緩やかに低下していきます。
動作性知能20代がピークで、その後急激に低下していきます。

これらを古典的(昔から言われている)な加齢のパターンと呼ばれています。

その他の分け方

結晶性知能すでに蓄えられた知識や経験を生かす能力
流動性知能新しい情報を獲得し、それらをうまく処理し、操作する能力

低下する事だけじゃなくて、維持される事も多いんだね!

良いところに気付いたね!状況の理解や物事の取り組むスピードが低下したり、二次元・三次元的な視覚情報の認識や新たな作業が苦手になったり、注意の範囲が狭くなることで二重課題も難しくなる一方で、これまで培った知識や経験は高いレベルで維持されているんだよ!このことは認知症の知的機能の理解においても重要となります!

もう一つ大事なこと!『個人内差』という言葉

認知症のケアの前提として、上に述べてきた内容を把握することの必要性を再認識していくことと共に、『個人内差』という言葉も理解しておくことで、『個人の背景』についての理解がさらに深まります!

個人内差とは

まず、高齢者には大きな個人差があります。1人として同じ人はおらず、すべての人は個性的で、どの年齢の時期でも個人差はあります。しかし、高齢になるとそれまでの人生経験の蓄積や心身の老化、仕事内容の影響などから、個人差が拡大すると言われています。

個人差:年齢や性がほとんど等しい間にある人たちの中で、二人以上を比べる事
個人内差:その人の中で何が得意で何が不得意なのか、個人だけで比べる事

例えばだけど、目は見えにくいけど耳はよく聞こえるという人もいれば、逆に耳は聞こえにくいけど目はよく見える人もあるって事だね!

その通り!個人の機能や器官、臓器の加齢変化にも個人差があることを個人内差と言うので、覚えておきましょうね!同じ年齢でも高齢者であることの自覚を持つ(老性自覚・老性意識)人もいれば持たない人もいるよね。自分の老いを認めたくない人もいれば、年寄として労わってほしいと思っている人もいる事を考えて、それらを理解しながらケアを行っていく事も重要なんだよ!

次は、認知症のケアについて学んでいきましょう♪

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